スキルアップセミナーNo.1 立竹木を見分ける編

スキルアップセミナーNo.1 立竹木を見分ける編

○立竹木を覚えたい!

25年以上前のことですが、当時の上司に「あなたはケヤキとサクラの区別もつかないのか!ダイジョウブ?」と呆れられました。ケヤキの街路樹並木を指して「春はきれいでしょうねー。」と言っちゃったからです。立竹木に関して当時は全く素人だったのです。

 

「このままじゃいけない。立竹木の判別をできるようにしよう!」と一念発起。勉強を開始しました。

 

スキルアップシリーズ第1回目は、私がどのようにして立竹木の判別ができるようになったかをお伝えします。立竹木を覚えたい!と思っている方の参考になればと思います。

○まずは引き出しを作る

何はともあれ、立竹木の名前を知らないと判別なんてできないな、ということで、書籍を購入しました。もう絶版になっていますが、確か「名前の由来で覚える樹木」という図鑑でした。(手元に残っておらず著者等の詳細な情報をお伝え出来ず申し訳ありません。)

 

立竹木がなぜそのような名前になったのか、過去の文献や言い伝えなどに基づく由来が記載され、その由来に応じた写真が掲載されているものでした。

 

例えば、「キンモクセイ(金木犀)は、金色の花が咲く木で、樹皮の質感がサイ(犀)に似ているから、キンモクサイ、その音が変化してキンモクセイとなった。」と動物のサイ(犀)の写真が掲載されていたり、「アセビ(馬酔木)は悪し実(アシミ)の音が変化してアセビとなった。誤って馬酔木を食べた馬が、酔っ払っているような状態になることから、馬酔木という漢字が当てられた。」と馬の写真が掲載されていたりするものです。由来にはさまざまな説があるようで、いずれも併記されていますが、最も覚えやすいと思われる説を印象的に写真として掲載しているので、記憶に残りやすかったと思います。

 

この書籍をトイレと通勤電車内で読み込む毎日でした。これを1年ぐらい継続しました。これによって、用対連の標準書に記載されている立竹木に関しては、おおむねその名称と特徴を覚えました。

 

この書籍はもう販売されていないので、今は「樹木の名前 山溪名前図鑑 和名の由来と見分け方/高橋勝雄、長野伸江/山と渓谷社」がとても分かりやすく、お薦めします。

 

このようにして、まずは立竹木の名称と特徴を憶え、検索のための引き出しを作ることが大事です。

○身近な立竹木から覚える

立竹木の名前を概ね覚えたら、実際に樹木を見ましょう。私はまず、通勤経路にある庭木や街路樹などのすべての立竹木の判別を目標にしました。これはとても効果的でした。

 

立竹木は季節によってその形態が変化します。花が咲き、葉が生え、実がなり、紅葉し、葉が落ち、冬芽が芽生え、花が咲き、この繰り返しです。通勤経路にある立竹木は、ほぼ毎日見ることになります。すると、種類がわからない立竹木も花が咲き、実がなると図鑑などで調べることができました。また、判別できた立竹木についても、季節によってどのような様相を呈するかをリアルに確認することができたのです。よく、立竹木研修で公園において実地研修が開催されることがあります。そのときは分かった気になるのですが、どうしても研修会が開催されたときの立竹木の様子しか見ることができず、季節によって変化する立竹木の形態をとらえることができません。その点、通勤経路にある立竹木は毎日見ることになるので、おのずと立竹木の季節による変化を確認することとなります。

 

また、当時は子育てで子供を近所の公園に連れていくことが多く、子供を砂場やすべり台で遊ばせている間、私は立竹木調査を行っていました。とりあえず、公園に植栽されている立竹木の種別はすべて明らかにすることを目標にしていました。浦安の世界的に有名なテーマパークに行っても、アトラクションよりも植栽に目がいっていました。

 

このように、日常的に立竹木調査を行うことによって判別できる立竹木がどんどん増えていきました。

 

ちなみに、会社の脇を走る都道の街路樹はホルトノキで、とても珍しいものです。先日行った千葉みなとの道路にはアキニレが植栽されており、これも珍しいなあと思いました。

○立竹木の具体的な見分け方

立竹木を見分ける方法はいろいろあります。樹形(高木、小高木、低木、つる)、(対生・互生・羽状複葉(奇数)、2回羽状複葉(奇数)、3出複葉)、葉裏の毛の形(腺毛、伏毛、鱗毛等)、葉の形(円形、卵形、楕円形、長楕円形、皮針形、ひし形)、葉脚の形(くさび形、円形、切形、心形)葉脈、鋸歯の有無(全縁)、樹皮、花(色、形状、季節)、冬芽(形状、色)、棘の有無などから総合的に判断することになります。

 

やはり、葉に着目して判別するのがスタンダードです。まずは葉のつき方を見ます。対生の立竹木はニシキギ科、モクセイ科、カエデ科、ミズキ科、スイカズラ科、ユキノシタ科などに限られているので、対生か互生かをみることによってかなり絞り込むことができます。そして、葉の形、葉脈、鋸歯の有無をみます。葉脈が3本で特徴的なのが、クスノキやヤブニッケイです。鋸歯があるか、全縁かによっても判別できます。サカキは全縁ですが、ヒサカキは鋸歯があります。

 

落葉樹は冬になると葉が落ちてしまうのでその場合は冬芽や樹皮を見ます。冬芽での判断は図鑑とにらめっことなりますが、意外と確実です。サルスベリやヒメシャラの樹皮はツルツルで、カキノキやハナミズキの樹皮は鱗状で独特です。落葉していても、落ち葉を確認するという裏技もあります。

 

花が咲いていると判別は容易になります。まずは初春にマンサク、春にはボケ、ハクモクレン、ハナモモ、サクラ、ユキヤナギ、ヤマブキ、ハナミズキ、ツツジ、フジ、アジサイ、クチナシ、夏に咲く花は少なく、ムクゲ、ノウゼンカズラ、フヨウ、サルスベリですかね。

 

ここで、私が立竹木を判別するのに愛用している図書を紹介しておきます。

 

「葉でわかる樹木625種の検索/信濃毎日新聞社/馬場多久男」

「冬芽でわかる落葉樹419種の検索 改訂版/信濃毎日新聞社/馬場多久男」

「花実でわかる樹木951種の検索/信濃毎日新聞社/馬場多久男」

スキルアップセミナーNo.1 立竹木を見分ける編ヤマブキ

スキルアップセミナーNo.1 立竹木を見分ける編クチナシ

○その他参考

先輩から教えてもらったのですが、「盆栽」は大きな木を凝縮して鉢の上の樹木に表現しているため、立竹木の特徴がデフォルメされており盆栽を見ると勉強になります。ケヤキなどは箒をひっくり返したような形なのですが、盆栽においてはその特徴がよく表現されています。ぜひ興味をもってもらえればと思います。

○きっといいことある

立竹木が判別できるようになると、補償コンサルタントとしてのスキルアップにつながることはもちろんですが、他にもいいことがあります。

それは、和歌、俳句、茶道、華道等の趣味につながったり、造園、公園、まちづくり等の参考になったり、浦安の世界的に有名なテーマパークで蘊蓄(うんちく)をたれることができたり、人としてワンランクアップしたような気分になれますよ。みなさん、立竹木を判別できるように頑張ってくださいね。

 

文/D.H.